長距離顕微鏡
クエスター社(QUESTAR)
1983年にクエスター社(米国)は、独自の長距離顕微鏡(長作動顕微鏡)の製造・開発を始めており、望遠鏡の光学系を革命的に一新したクエスター式と呼ばれるマクストフ光学系を、クエスター社が初めて開発してから50年以上が経過しました。小型軽量で、他の追随を許さない卓越した光学性能等が高く評価され、クエスター望遠鏡の確固たる名声が世界中に確立されました。
そして、この優れた性能を活かし、研究や生産の場で計測・検査・監視・芯合わせ等に使いたいとの強い要望が数多く寄せられた為、クエスター社ではこれらの要求を十分に満たす長距離望遠鏡を開発しました。これはたちまち高い評価を受け、1983年にはその年の最も価値ある新機軸製品の一つとしてIndustrial R/D誌から表彰されメダルを受賞しています。
また、長距離顕微鏡の利用者から更に寄せられた特殊な要望を解決するため、新しい開発を進めた結果、数種の型式の長距離顕微鏡が次々に発売されています。 高精度計測に大変有効な撮像装置としてこれらの長距離顕微鏡を組み込んだ総合システムも開発され、独立型の非接触光学遠隔装置として世界中で広く使われています。
これらのクエスター社の製品は、これまでに2つのIR100賞とフォトニック社からCircle of Excellence賞を受賞しています。
クエスター長距離顕微鏡(長作動顕微鏡)
クエスター長距離顕微鏡(長作動顕微鏡)は、「真空チャンバー中で行われる実験で微細な動的過程のリアルタイム観測・計測」、「有害な環境下にある試料の顕微鏡観察」、「オンラインでの精密検査」といった、長距離顕微鏡での計測・検査・監視・芯合わせに強力な画像化の手段を、という研究者や生産現場からの強い要望により開発されました。
長距離顕微鏡光学系により、雑然としがちな作業エリアから観察系を外に出すことが出来ます。なおかつクエスター長距離顕微鏡により、高いレベルの要求に基づく高倍率・高解像度の画像を得ることが可能になります。
最初の形式の長距離顕微鏡開発後、さらに寄せられた利用者からの特殊な要望を解決するために、タイプの異なる幾つかの光学系が開発され、クエスター長距離顕微鏡はシリーズ化されました。また、観察・測定を補助するアクセサリーや長距離顕微鏡を核とする計測システム等が合わせて開発されています。
マクストフカセグレン
クエスター長距離顕微鏡はマクストフカセグレンと呼ばれるレンズミラー複合光学系が採用されています。この形式で入射光は、メニスカス形状のコレクターレンズから主鏡へ、主鏡からコレクターレンズの裏側に蒸着された副鏡へと折り返され、主鏡中心の軸穴から主鏡後方に結像されます。この形式は、星像を正しく点像として結像しなければならない天体望遠鏡の分野で、クエスター社がはじめて製品化した光学形式です。
マクストフカセグレン光学系により、クエスター長距離顕微鏡では1mを越える長い焦点距離が全長30cmに満たない鏡筒に折り畳まれ、収められています。同時に主鏡曲率中心付近に置かれたフロントレンズ系(コレクターレンズとその裏面に蒸着された副鏡)により収差が補正されます。
外観はほぼ同じに見えるクエスター長距離顕微鏡も、コレクターレンズの形状に個別の特徴を見ることができます。クエスター社の長年にわたるマクストフカセグレン形式でのノウハウ蓄積により、各機種はそれぞれが受けもつ作動距離において最良の光学設計を得ています。これが、フロントレンズ系の形状の違いとなって外観に現れています。また、視野内のディストーションは1/15,000と計測用として優れたリニアリティーをもっています。
製品紹介
QM1
特徴
- 長距離顕微鏡(長作動顕微鏡)QMシリーズの標準型
- 検査距離は55cm~170cmの間
- 微視的検査体の拡大像の観察や計測に最適
- 実視倍率は約125倍
主な仕様
QM100
特徴
- 長距離顕微鏡(長作動顕微鏡)QMシリーズで最も短い作動距離
- 作動距離は15cm~35cmでシリーズ最高の分解能
- 光学性能(例えば歪みは1/15,000以下は特に優れ、視野内のリニアリティーも完璧
- 極度に良い分解能を要求される実験室での研究に最適
主な仕様
FR1
特徴
- 近くにある検査体から非常に離れた検査体まで観察できます。
- 100cmから無限大までの間にある検査体に焦点を合わせられる特別な性能を持ちます。
主な仕様
MKⅢ(エムケースリー)
特徴
MKⅢ鏡筒では新設計の焦点合わせ機構等、機械仕様が一新されています。 精度を追求した焦点合わせ機構は全ての範囲にわたり光軸のブレがありません。
MKⅢタイプ
新たに設計された機械仕様の筐体にQM1-QM100-FR1の光学系を収めました。よりシステム化に向いた仕様です。 付属品は最小限なのでシステム設計に基いたオプションを選択頂けます。
MKⅢタイプ標準付属品
- Cマウントアダプター
- 延長筒(大)
- ターゲットライト
- レンズキャップ
- ケース
SZ-Mシリーズ(ステップズーム)
SZ(ステップズーム)鏡筒はMKⅢの鏡筒に下記の機構が加えられています。
- 電動焦点合わせ
- 5段階倍率変換
- 4種類のフィルター切り替え(NDフィルター、カラーフィルター等)
焦点合わせ補助機能プログラム
- プログラムにより倍率やフィルターを切り替えた後、焦点ずれの補正が加えられます。
- 現在使用しているレンズ機能(倍率)は専用コントローラの液晶画面に分かり易く表示されます。
- 焦点合わせ機構及び本体構造はMKⅢと同じ新設計機構が備えられております。
MKⅢ、SZ-Mタイプは過酷な環境にも耐える頑丈なタイプです。
宇宙空間のような極限状態でも正常に機能するように特別に設計されたタイプです。過酷な環境下でも正常に作動し、10Gの衝撃や振動を受けても大丈夫です。 また温度補正構造なので、極端な高温や低温下で使っても映像には歪みがありません。 高い温度・揮発性・腐食性などの有害な外気の中に設置して使っても、光学系・機械部・カメラが完全に外気から遮断されているため安全に使用できます。
紫外や赤外域への撮像領域の拡張
QMシリーズの標準の光学系は(350-2200nm)の間の波長域の光を透過し撮像できるように設計されております。 紫外光から赤外光(180-4000nm)まで透過させる光学系が必要な際は溶融石英を使用したコレクターレンズの仕様もラインナップされており、 さらに上の波長域が必要な際はCalcium Fluorideを使用すれば(180-7000nm)まで対応可能です。
SZ-M(ステップズーム)タイプ 標準付属品
- Cマウントアダプター
- ターゲットライト
- レンズキャップ
- ケース
- ハンドコントローラ
- 筐体内蔵のターレットに各4種類の補助レンズ及びフィルター
-
コントローラと本体 -
本体裏面 -
アクセサリ -
ケース収納時 -
ケース中身全体 -
ケース外側
アクセサリ
標準装備
クエスター長距離顕微鏡(長作動顕微鏡)QMシリーズには、下記のアクセサリが標準装備されております。
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1.5倍バローレンズ -
2倍バローレンズ -
16mmアイピース -
アイピースホルダ -
172mmポジティブレンズ -
C-マウントアダプタ -
延長筒(小) -
延長筒(大) -
スイーベルカップリング -
ターゲットライト -
専用ケース
Power pak(パワーパック)
QM100長距離顕微鏡の解像度と倍率をさらに上げるために特別にラインナップされているアクセサリです。
- QM100専用設計の10cm近接アプラナートアタッチメントレンズと3倍バローレンズにより構成されます。
- QM100にアプラナートレンズを組み合わせると10cm離れたサンプルをサブミクロンの解像度で観察できます。
- アプラナートレンズは鏡筒の前面に装着し、3倍バローレンズは鏡筒とカメラの間に装着します。
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左:アプラナートレンズ|右:3倍バローレンズ
使用例
材料試験
長距離顕微鏡(長作動顕微鏡)がもっとも頻繁に使われるのは動力学や静力学的検査を行っている間の物質の性質の反応をモニターしたり測定したりする分野です。 長距離顕微鏡やそれを組み込んだシステムは、テスト中のデータをリアルタイムで取り出す目的に理想的な装置といえます。 作業可能距離が長いので、サンプルの取り扱いが楽ですし、高温体観察や磨かれていない凹凸面の姿の詳細な観測に適します。 さらに、測定制度が高く、倍率も変えられ性能を組み合わせて、テスト中の物質の変遷を正確に解読できるよう、映像データ間の相関を正確に関係付けることができます。
スペースシャトルの振動保護
スペースシャトルがはじめて宇宙から帰還した時、激しい加熱から船体を保護する為に使われていたタイルは、変更する必要があることが明白になりました。 この問題を解決する為、NASAの研究者たちは材料破壊の動力学を解決する必要があり、 シミュレーションした大気圏再突入時の条件下でのサンプル面を、長距離顕微鏡を使ってモニターし、問題を解決しました。
塗料中の金属測定
自動車会社はむら無く着色する為に、塗装過程中に金属塗料の中の粒子を並べる方法を開発したいと希望していました。 適当な技術が開発されるまでの期間、長距離顕微鏡(長作動顕微鏡)に高速度ビデオカメラをつけて、環境の変化による塗装過程中の粒子の並びの変化の様子を観察しました。
プラスチックの型込み
要求されている寸法より大きな部品を型込みし、それを焼付け、使用通り小さくする技術をプラスチック業者が開発しました。 この時我々が直面した問題は、どれだけの時間、また何度の温度でその部品を焼付けするかでした。 部品が焼付けされている間の収縮の様子を長距離顕微鏡を使えば直接モニターできるので、 旧来の測定顕微鏡で繰り返し炉から部品を取り出しては焼付けし、パラメータを記録していた過程を省略できました。